トトロ的存在 佐藤光浩 少年愛小説
可愛い笑みに誘われて思わず微笑(ほほえ)みながらも、飯島はそう言っておもむろにトオルの腰を抱き寄せたまま立ち上がった。――――誰かが傍にいるような気がする。軽く振っただけで、肩あたりまである柔らかな髪から、小さな雫(しずく)が飛び散った。その熱さが、まだこの幸せを信じられないような気がする恭一に、これは本当だと教えてくれる。
セフィエスが、ふ、と微笑んで雪耶を見遣った。けっきょく自分にとって興味のあること、都合のいいことだけしか見ないのか。
馴れない恭一はつい照れて拒むような言動をしてしまうのだが、森安は強く押しやられても気にする様子はない。威圧するような二狼の態度に、利根川がかすかにたじろいだ。だけど、そんな史朗がときおり発する言葉は、なによりも強い勇気となって、俺の心に届くんだ。「前のガス漏れも自殺しようとしてか?」。「あの、もし本当に僕が兄さんについていくって言ったら……どうするんですか?」。「いえ、そんな……痛っ」。荒っぽく後ろ髪をつかまれ、グイッと引き寄せられる。
「ひとつ……?」。
今日は一応、同居初日の、言うなればホントの新婚初夜なわけだから。てきぱきと片づける鎧の手元を見ながら、玲央奈は初めて笑顔らしい笑顔を浮かべた。「そうはいうけど、明日は苦手な古文だからさ。気合い入れて、さらっておかねぇとヤバ……い…」。だが、耳には心地よい音色だ。「そういうことなら……いい」。弾力を確かめながら、俺は桂の唇に、舌を滑りこませた。歳森は静名の拒絶に驚いた様子もなく、淡々とした口調で答える。
いきなり抱き寄せられ、実生は息を呑んだ。そういえば、映画館も久しく行っていない。「そうか?」。椅子(いす)の上で居ずまいを正しまっすぐパソコンの画面をにらみつけたトオルは、学生のときから愛用しているトレーナーの袖(そで)を無造作にまくりあげ、両手を色褪(あ)せたジーンズの腿(もも)に擦(こす)りつけると、改めてマウスに手をのせた。不安げに桂が問う。でも、それは俺の錯覚……妄想、なんだから。
ボーイズラブ小説作品紹介
大学生の雪耶は富豪の友人に身代わりを頼まれ、ヨーロッパの海をクルージングする客船の旅をすることに……。 富豪の息子として振舞う雪耶に、戯れの恋を仕掛けるギリシャ人の大富豪、セフィエス・パパンドレウ。 彼との束の間の関係は、旅が終わればすべて消えてなくなるはずだった。 しかし、昼と夜と情熱的なセフィエスにすっかり魅せられた雪耶はいつしか本気で恋をして――!?
タイトル:偽りと情熱のクルーズ
著 者 名:上原ありあ
レーベル:ダリア文庫e
発 行 元:フロンティアワークス
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